報告書等
著作権と授業 FAQ (出前講習会から)
2026年3月13日版
AXIES著作権出前講習会の際の質疑から、「よくある質問」をまとめました。
- 学生のデータだけでなく教員の研究データも著作権がないのか?
- 生成AIで生成した絵に著作権はあるか
- 同一性保持権と翻案権の違いはなにか
- 生徒が授業で機械学習をする時、学習素材のコピーは30条の4か35条か?
- 大学のゼミで、論文一本を輪読するなどしたいが、授業担当者はゼミ内で複製配布してよいか
- 市販のテストを復習のために、生徒に配布してよいか
- 部活を地域移行した場合にも35条を適用できるか
- 放送委員が校内放送でかける曲は、CDのものでもよいか、サブスクはだめか
- 卒業式でCD音源の音楽を使ってよいか、その動画をDVDに焼いて配布してよいか
- 本の図を真似て作成した図をつかった資料をOA(オープンアクセス)公開すると侵害になるか
- 保健室や保健室前の廊下に掲示するチラシを養護教諭が作成する際に、ポケモンなど既存キャラクターを使ってよいか
- 卒業文集で生徒が描いた絵やイラストを掲載しており、好きなアニメキャラなどを模倣したものもあるが問題ないか
- 美術の授業で学生が既存の缶コーヒーを模写して描いた静物画を、その学生が絵画コンクールに提出しても問題ないか
- 文化祭などで企業ロゴをアレンジしたTシャツを作ってよいか
Q:学生のデータだけでなく教員の研究データも著作権がないのか?
A:著作権は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に対して発生し、学術的、経済的な価値があったとしても単なる事実や数値データ自体には生じません。そのため、学生・教員いずれのものでも、生の研究データや統計数値自体には著作権はありません。一方で、研究者や学生が独自に作成したデータに関する図表、文章によるデータの考察、体系的に構成されたデータベースなど、創作性のある表現については著作権が発生します。データ自体と、その表現は区別して取り扱う必要があります。
Q:生成AIで生成した絵に著作権はあるか
A:生成AIが自律的に生成しただけの絵には著作権は認められません。著作権を有する「著作者」は、「著作物を創作する者」と定義されていますが、AI自体には法的人格がないためです。しかし、プロンプトの分量、内容の工夫や生成の試行回数、複数の生成物からの選択、AI生成物に対して人が加えた加筆、修正などを考慮して、人がAIを道具として利用して創作的に寄与した部分については、その範囲で著作権が認められる可能性があります(「AIと著作権に関する考え方について」39頁以下)。AI自体は著作者になれませんが、人の個性が表れた部分については人による創作として著作権で保護され得ると考えられています。
Q:同一性保持権と翻案権の違いはなにか
A:同一性保持権は著作者人格権の一つで、著作物の内容や題号を著作者の意に反して改変されない権利です。一方、翻案権は著作権(著作財産権)の一つで、既存の著作物に依拠し、その本質的特徴を維持しながら新しく創作性を加えた別の著作物(二次的著作物)を創作する行為をコントロールする権利です。つまり、同一性保持権は著作物の「改変防止」、翻案権は「二次創作の制御」という目的の違いがあります。
また、権利制限規定は、著作権に適用されますが、著作者人格権には適用されません(50条)。この点も同一性保持権と翻案権の違いとなります。
Q:生徒が授業で機械学習をする時、学習素材のコピーは30条の4か35条か?
A:権利制限規定はそれぞれの規定の要件をみたすのであれば、重複して適用することが可能です。まず、生徒が授業で機械学習を行う場合は、著作物を情報解析のために利用することができる30条の4が適用されます。また、生徒が授業の過程における利用のために機械学習をする際に著作物を複製するのであれば、35条1項も適用されます(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)31頁参照)。
Q:大学のゼミで、論文一本を輪読するなどしたいが、授業担当者はゼミ内で複製配布してよいか
A:大学のゼミ活動は「授業」の一環にあたり、著作権法35条の対象となります。そのため、輪読などで論文一本全体を複製する必要がある場合には、著作権者の利益を不当に害することとなる場合でなければ35条の適用が可能と考えられます。著作権者の利益を不当に害さない場合として、運用指針は「①当該論文が市場に流通していないこと、②論文集などの編集物に収録されている他の論文が授業とは関係ないものであること、③定期刊行物に掲載された論文等の場合、発行後相当期間を経過していること」というものを当面の基準として、著作権者の利益を不当に害しない範囲を判断することが適当であると示しています(運用指針P14〜17)。従いまして、①論文が市場に流通しておらず、②論文集に掲載されている場合には、他の論文は授業と関連せず、③定期刊行物に掲載された場合には発行後相当期間が経過していれば、ゼミ生に対して複製、配布することは35条1項の適用が可能と考えられます。
Q:市販のテストを復習のために、生徒に配布してよいか
A:市販のテストのように生徒による購入を想定している著作物は、必要と認められる限度を超え、又は著作権者の利益を不当に害するとして、基本的に35条1項を適用できないと解釈されています(運用指針P23〜24)。そのため、復習自体は「授業」であるものの、市販のテストをコピーして配布する行為は複製権を侵害する可能性があります。出版社が複製を許可している場合を除き、市販テストのコピーを配布することは避けましょう。
Q:部活を地域移行した場合にも35条を適用できるか
A:地域移行とは、学校部活動を地域クラブ活動に代替させていくこと(スポーツ庁「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関するガイドライン」に関するQ&AのQ3)をいいます。Q3に書かれているとおり、地域クラブ活動は「地域クラブ活動の運営団体・実施主体が行うものであり、学校部活動とはそもそもの責任主体が異なります」。著作権法35条は「学校その他の教育機関」、つまり、組織的、継続的に教育活動を営む非営利の教育機関(運用指針P6)に適用されます。そのため、地域クラブ活動の運営団体は、「学校その他の教育機関」に該当せず、35条が適用されない可能性が高いです。したがって、教材のコピーなどの著作物の利用については許諾取得が必要となります。
Q:放送委員が校内放送でかける曲は、CDのものでもよいか、サブスクはだめか
A:同一の建物内における著作物の有線放送は「公衆送信」に該当しないため(2条1項7号の2括弧書き)、校内放送は公衆送信には該当しません(運用指針P5)。市販のCD音源を校内放送で流すことは、著作権法上の「演奏」となりますが、非営利無償の演奏の場合は利用が認められています(38条1項)。一方で、サブスクリプション音楽配信サービスは、利用規約により「個人的・家庭内での使用」に限定されていることが多く、その場合に学校の放送で使用することは規約違反となります。38条の権利制限と契約のどちらが優先されるかは議論があるところであるものの、基本的には契約は有効である前提で対応することが無難です。従いまして、サブスクは校内放送で使用しないことを推奨します。
Q:卒業式でCD音源の音楽を使ってよいか、その動画をDVDに焼いて配布してよいか
A:卒業式で市販CDの音源を流すことは、非営利無償の演奏として認められており問題ありません(38条1項)。しかし、その音源が入った式典動画を録画し、DVDに焼いて配布したり、オンラインで公開したりする行為は、著作権のうち複製権・公衆送信権侵害、また、著作隣接権の侵害にあたりますので、権利者の許諾が必要です(運用指針特別活動追補版P3参照)。
Q:本の図を真似て作成した図をつかった資料をOA(オープンアクセス)公開すると侵害になるか
A:元の図の特徴的な構造や詳細なデザインのような創作的な表現を再現している場合は「複製」や「翻案」に該当し、著作権侵害となる可能性があります。単に元の図の内容や着想を参考にしただけで、具体的な図の表現が独自であれば問題ありません。もっとも、OA公開は広く公衆の目に触れることになるため、リスクが高まります。授業資料に用いる場合でも、外部公開する際は、32条1項の引用に基づく利用とするか、デザインを大きく変えるなどの対応が必要です。
Q:保健室や保健室前の廊下に掲示するチラシを養護教諭が作成する際に、ポケモンなど既存キャラクターを使ってよいか
A:保健室や廊下に掲示するチラシの作成は、授業の過程における利用とはいえないため、35条1項の適用は難しく、学校内の掲示物であっても権利者の許諾が必要です。安全のため、利用が認められている素材や学校独自のイラストを使用することを推奨します。
Q:卒業文集で生徒が描いた絵やイラストを掲載しており、好きなアニメキャラなどを模倣したものもあるが問題ないか
A:既存のアニメキャラクターを模写した作品は原著作物の創作的な表現を再現しているため、複製権侵害になる可能性があります。授業の一環として生徒が練習で描くこと自体は、35条1項を適用して許諾なくできると考えられます。一方で、卒業文集にアニメキャラを描くことは授業の過程における利用とはいい難いですし、卒業文集は記念品的な性質も有すると考えられます。運用指針特別活動追補版でも、「特別活動の実施後に児童生徒や保護者等に記念品等として配布する目的で、著作物が含まれる特別活動の映像、音声等をDVD等の記録メディアに保存(コピー)する場合は、著作権者や著作隣接権者等の許諾が必要である。」とされています(P3)。卒業文集を配布する場合は、これに準じる取り扱いをすることが安全です。なお、引用(32条1項)の条件をみたす場合には、文集でアニメキャラを描くことも可能なこともあります。
Q:美術の授業で学生が既存の缶コーヒーを模写して描いた静物画を、その学生が絵画コンクールに提出しても問題ないか
A:缶のデザインやラベルがシンプルなものではなく、絵画的な要素のある表現である場合には著作物になる可能性があります。仮に缶コーヒーのデザインが著作物に当たる場合でも、授業での模写ですので、著作権法35条1項が適用され、授業においては複製することが可能です。しかし、絵画コンクールへの出品は授業の範囲外となるため、缶コーヒーのデザインが著作物に当たる場合には、著作権侵害となる可能性があります。なお、缶コーヒーのデザインが著作物に当たらない場合には、絵画として描くことは通常問題ありません。商標との関係では、絵画として描いても、商品の出所を識別する機能を果たさないため、いわゆる商標的使用ではないと評価されることが通常です。
また、コンクールでは、応募作品に特定の条件を設けていることがあります。応募する前に必ずコンクールの規約を確認しましょう。
Q:文化祭などで企業ロゴをアレンジしたTシャツを作ってよいか
A:まず、企業ロゴに絵画的な要素が入っており、著作物になる場合には、アレンジの程度によりますが、アレンジしたロゴをTシャツにプリントすると、複製権や翻案権侵害となることがありますので、注意が必要です。他方で、企業ロゴがシンプルなデザインの場合には著作物にならないこともあります。この場合、著作権の観点からは問題ありませんが、企業ロゴは商標登録され、商標権で保護されていることが多いです。また、不正競争防止法の「商品等表示」として保護されることもあります。結局のところアレンジの程度によりますが、クラスTシャツなどで使用する場合、あくまで企業ロゴの抽象的なイメージのみを参考にし、具体的なロゴとしては大きくアレンジして、企業ロゴと大きく異なるデザインにしておくことを推奨します。
監修:弁護士 木村剛大